影響を受けたギタリスト その4「イェラン・セルシェル」
私が影響を受けたギタリストについて好き勝手に語るコーナーです。
その1〜その3まで全員エレキギタリスト(こういう言い方あまり好きじゃないけど)で、普段クラシックギターとアコースティックギターをメインに教えている私を知る人からすると、「いつになったらクラシックギタリストが登場するんだよ」とお思いかもしれませんが、私のギター人生の前半はロック・ロック・ロック・たまにクラシック・ロック・ロックでした。
で、その『たまにクラシック』に登場したのが『イェラン・セルシェル』その人なのです。
正直に言います。セルシェル自身、私はあまりたくさん聴いてきたとは言えませんし、好きかと聞かれると「普通」と答えると思います。じゃあ、なんでセルシェルが影響を受けたギタリストに入るのかというと、クラシックギターで最初に良いと思えた曲を弾いていたのがたまたまセルシェルだったから、ただそれだけの理由です。
その最初に良いと思えたクラシックギターの曲はバッハの『リュート組曲ホ長調 ガヴォット』です。この曲はそもそも純粋なクラシックギター曲ではありませんし、セルシェル単体のCDではなく、数曲のアーティストの録音が一緒になったコンピレーションCDの一曲に過ぎませんでしたが、当時小学生の私にはとても惹かれるものがありました。この曲を聞きながら、テストの勉強をするとなぜか集中でき、おかげで(?)満点を取ったのをいまだに覚えています。(余談ですが、イタリアのマンドリニストのカルロ・アオンツォ氏とやった時も、セルシェルとギル・シャハムの録音を研究したりしたものです)
当時はわかりませんでしたが、今はなぜ集中できたのかをある程度分析できるようにはなりました。まずセルシェルの特徴は11弦ギターを使用するところにあり、ギターでは出すことが不可能な音域を出せるようになります。また自ずと倍音も増えるということになります。この倍音のバランスが私にとって心地よく、集中できる・・・といったところでしょうか。11弦ギターの仕組みとしてはリュートに近いかと思います。リュートとギターのいいとこ取り!みたいな感じでしょうか。ただ、そんなうまくいくなら、みんな多弦ギターを使っているはずですが、そうではありません。弦が増える、倍音が増えるということはそれだけコントロールが難しくなるということです。
セルシェルの凄いところはこの11弦ギターを完璧に使いこなし、自身の音楽性と見事にマッチングさせているところにあるかと思います。多弦ギターのバッハの録音としては10弦のイエペスやシュテファン・シュミットのもの、8弦ではギターのラファエラ・スミッツが私の知るところです。ここにあげた人たちの生演奏を聴いたわけではなく、CDを通してでしか判断できないので、録音による差異があるのは認めますが、セルシェルのものは柔らかいタッチと11弦ギターの響きが実にマッチしていて、私にとってはやはり彼の11弦が一番聴いていて心地よいです。
イエペスのように、10弦を使い始めてからは、ほぼそれしか使わなかったのとは違って、セルシェルは一辺倒にならず6弦でもしばしば弾いているところなどを見るに、柔軟な人なんだなと感じます。
そう、柔軟。
彼を表すならばそんな言葉が適当かもしれません。
彼はyoutubeのチャンネルで、今も精力的に演奏動画をアップしています。一番新しい動画が、なんとこれを書いている3日前。もう巨匠と言っても差し支えないと思いますが、このフットワークの軽さと柔軟さは見習わなければならないでしょう。(しかもコメントするとちゃんと返してくれる!)
もちろん演奏の方も素晴らしいの一言です。
やはり、なぜかセルシェルの演奏を聴いていると凄く作業がはかどるんだよな。
この記事をシェアする: Tweet
この記事のカテゴリー: ブログ