ベルリン・フィルのアランフェス協奏曲を聴く!
先日、静岡の街に買い物へ出かけたら、サウンド・キッチンでジークフリート・ベーレントのアランフェス協奏曲のLPを見かけたので買ってきました。
500円でした。指揮はラインハルト・ペータース。1966年の録音です。
ペータースと言えば、N響などでもたまに振っていました。ドイツの巨匠!とまではいかないんですが、中堅指揮者くらいのポジションかもしれません。
一方、ソリストのジークフリート・ベーレントもドイツの人で、ギタリストにとっては編曲モノの楽譜などで、一度は目にされた方も多いのではないでしょうか。
この録音の特筆すべき点と言えば、何と言っても、あの天下のベルリン・フィルが伴奏を務めているということです。ベルリン・フィルがアランフェスを演奏したのは、おそらくこの録音だけではないでしょうか。(他に知っている方は是非教えてください)
さて、肝心の演奏に触れるとしましょう。A面のアランフェス協奏曲からです。
第一楽章からいきなり飛ばしています。このテンポはかなり速い方に入ります。山下和仁のパイヤール管/フランソワの録音並かもしれません。
そして、速いテンポを採ったためか、やはり技巧的にほころびが見られます。
ベーレントはイエペスばりに即物的なギタリストです。このテンポのせいなのか、自身の演奏がこの録音ではできていないように感じます。特に、スケールの高音部になると音が出切っていなかったり、和音の出し方に曖昧な点が見受けられます。他にも、倚音を省略していたりと・・・突っ込みたくなる点はいくらでもあります。即物的にとこだわりすぎたために、技巧が不自然になったり、ぎこちなくなるということは、イエペスにも共通するところです。
ところが、この速さですとオーケストラの方は生きるのです。ギタリストは死にますが。
協奏曲はソリストに合わせるのが基本ですが、もしかしてベーレントは不本意なテンポで録音に臨まされたのでは?・・・なんてことも勘ぐってしまいます。
なんたって相手がベルリン・フィルなのですから。
第二楽章です。
冒頭のイングリッシュ・ホルンがとてつもなくアッサリしています。アランフェス第二楽章特有の”ねちっこさ“のかけらもないです。この楽章を通して、ベルリン・フィルはとにかくアッサリしています。ドイツ的な解釈と言われればそれまでですが、もうちょっと見栄をきってもよかったのではないか?と思えます。
ベーレントのソロ部分もやはりアッサリ風味です。何か哀愁が足りません。
やっぱり速いんです、これ。
アランフェス宮殿じゃなくてツヴィンガー宮殿を見ているようです。
哀愁をたたえた美ではなくて、構造的な美というか。これはこれで面白いのですが、一般的なアランフェス協奏曲を想像していると、面を喰らうかもしれません。
ソロ終盤のラスゲアードの部分と、それに続くオーケストラの入りは一聴の価値あり。
実に面白いです。
第三楽章です。
通して聴くと、この速さはやはり正しいのではないか・・・?という思いさえ抱かせてくれるのですから、やはりこの録音はただ者ではありません。
惜しむらくはベーレントの演奏、これがどこか歯切れが悪いのです。一音一音にルバートがかかっているというか、テヌートがかかっているというか。どうもねちっこいのです。このねちっこさを第二楽章で出してほしかったという思いがあります。スケール部分は素晴らしいのですが・・・。
ベルリン・フィル/ペータースの演奏は流石です。特にこういったハツラツとした楽章ではベルリン・フィルの真骨頂が発揮される気がします。
総評です。
良くも悪くも、古き良き時代の録音
という感じがします。
ベーレントとベルリン・フィルがところどころで噛み合っていません。
「俺はこう表現したいんだ!!」
という気持ちがお互いにぶつかり合ってるような気もします。
決して名演とは言えないのですが、なんとも不思議な録音です。
後日、B面のテデスコの録音についても書きたいと思います。
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